オリジナル作品・ネタ

無題4

プロローグ

死異音編

「お母さん、お父さん、やめて!死異音がかわいそう!」
「気にしなくても良いのよ。死異音の事なんて…」
「そうだよ、これは瀬唯羅の妹なんかじゃないんだよ」



二人の研究員がいた。
国の元で働いていた。
それはいわゆる地下組織であり、公式には行えないような事の研究をしていた。
二人の研究員は子供を産んだ。
だが二人は結婚はしていなかった。
産まれたのは女の子。二人はその子を可愛がって育てた。

それから3年。世界には次第に怪しい動きが見られた。
新しいもの、危ないもの、それを試す為の「人間」……必要になった。
人体実験に使う人材が、どうしても必要になった。
そして、二人は、再び子供を産んだ……。

「今日はね、ちゅーしゃをいっぱいしたの。わたし、イタイのヤだな…」
死異音は瀬唯羅の部屋のソファに座っている。
「私がお父さんとお母さんに一生懸命言うから…」
瀬唯羅は死異音の腕に付いた赤い点にばんそうこうを貼りながら言った。
―――あの時私は…死異音を守りきれなかった―――


「食事が終わったら研究所まで来るんだよ」
母親の言葉に素直に頷く死異音。
瀬唯羅は今日もそれを黙って見送るだけだった。
「大丈夫だよ、おねーちゃん」
そう笑顔で答えて、死異音は研究所に消えた。
―――私がもう少し強ければ―――


「死異音!しいね!死ぬんじゃないからね!お姉ちゃんがついてるから!!」
青ざめた顔をしてがたがた震える死異音を、瀬唯羅はしっかりと抱きしめてそう叫んだ。
「おとーさんと…おかーさんは…わたしのこと…キライなのかな?」
「そんなことない!そんなことないよ!」
―――こんな日が続くなら…せめて死異音だけでも―――


「何を考えているんだ?」
「死異音?あのコが私たちの子な訳無いじゃない…。
瀬唯羅も、いつまでもあんなモルモットに対してお姉さんぶらなくて良いのよ」
―――もう、耐えられない―――
「あっ!何をしているんだ!?」
「待ちなさいっ!せいら〜〜〜!?」



………………



私は逃げた。……死異音を連れて。
どこか遠くへ……あいつらの追ってこないどこか遠くへ……




死異音と二人で過ごしたしばしの日々…。
私は死異音を学校にも行かせてあげた。
友達が出来て、楽しそうに毎日遊んで……
しかしそんな楽しい生活も長くは無かった……。


「ここにいたんだね?やっと見つけたよ」
―――母親の狂気に満ちた目―――
「瀬唯羅…お前は僕たちの大切な一人娘だと思っていたのに…」
―――父親の手に握られた大きなナタ―――



視界は……真っ赤に染まっていた……
私は…死異音を守りきれずに……
わたしは…死異音の姉として…一人の人間として…

ワタシハ…シイネを…マ も レ ず ニ …


バラばラ に なッテ



ワ タ シ ハ







シニマシタ

魔鎖鬼編

気が付くと、私はいつものように自分の手のひらを見ていた。
こうすると親戚のおばさん達はすごく嫌がった。
10年前の、あの日。私は家族と何も変わらぬ平凡な1日を終えようとしていた。

暑さで目が覚めると、私の周りは既に火の海…。
私から少し離れた所に敷いてある布団は、そこにいた人物もろとも跡形も無くなっている。
熱くて、熱くて、気を失いそうになる中。
火だるまになりながら抱き合う、私の母と弟が見えた。
しかしそれももはや人間と認めたく無くなるような容姿をしていた。
恐怖と、絶望と、狂気の中に、私は独りで取り残された。

自分の体に燃え移った炎の熱さを感じることはもう無かった。
まっすぐと天井越しに空を見上げながら私は、自分の家が全て燃え尽きるまでそこにいた。

家は全焼した。
両隣の家を二軒も巻き込んで…。
全て焼け落ちた…。

……しかしそこにまだ私は居た。
ガレキの中に座り込み、空を見上げたまま…。

私は無傷だった。ヤケドの少しも、かすり傷さえ負っていなかった。

親戚に預けられた私はそれこそ化け物扱い。
家族を焼き殺した殺人鬼だとまで言われた。
それにくわえてなんと、あの事件以来私の体は、自分の思い通りに発火してしまうという突然変異が起こっていた。
独りで寂しくなったり、あの日の夜の事を思い出していると、こうして両手を上に向け、発火させてしまっていた。
それを、おばさん達は凄く嫌がった…。

気持ちが悪いから殺してしまおうと、話しているのを聞いてしまった私は…。
家ごと…。みんなを焼き殺してやった…。
私だけは燃えずに…みんなが焼け死ぬのを眺めていた…。

わたしに居場所は無い…。私にどこか行く当てもない…。

……無かった。